薬事法における常温は何度のことか知っておこう
病気やけがをしたときに、症状を緩和し治りを早くするのが薬の役目です。その薬を活用する際に、絶対に覚えておいてほしいのが薬の保管方法です。薬の保管方法を間違えてしまうと効果が半減するだけでなく、最悪の場合薬が猛毒になってしまうリスクもあります。
この記事では、薬の保管における温度などいくつかある注意点について紹介します。
薬事法では保管に関して明確なルールが定められている
現在では「薬機法」と変換されていますが、古くからなじみがあるのが「薬事法」です。薬を含めた医療行為に使うものは、うまく活用することで人々の健康に対してプラスに働きます。しかし使い方を間違えると、逆に体を害するものになるため、その害となることを未然に防ぐためにルールを決めたのが「薬機法」および「薬事法」の目的です。
その「薬事法」では、最も人間の体に強く作用することになる薬について細かくルール付けがされています。その細かいルール付けの中でも、特に保管において最も重要視されているのが「湿度」と「温度」です。
「湿度」と「温度」は薬の安全性に密接にかかわっている
湿度が重要視されている理由については、衛生面が大きく関係しています。薬には薬効成分を高めるために人工的に生成したビタミンやミネラルを添加しているだけでなく、子供用の風邪薬を代表するようにそのままでは苦くて飲めないのを防ぐために甘味料などを加えることもあります。
これらの添加物を加えることで薬の効果を上げる助けにはなっていますが、逆にこれらの添加物は人間以外の生物にとっても栄養源ということを忘れてはいけないです。湿度は空気中に含まれている水分量であり、その量が多いほど水分が多いことを意味します。
湿度が高い場所に放置してしまうと、カビなどの雑菌にとって繁殖しやすい環境が整ってしまいます。雑菌の繁殖で表面に綿埃のようなものがついていればわかりやすいですが、すべての菌がそういったわかりやすいサインを出すわけではないです。
見た目ではわからないが中身に雑菌が繁殖した薬を服用してしまうと、その毒素によって体に悪影響が出てしまうので湿度も注意点にあげられる理由になります。温度には、薬の薬効成分を変化させてしまうリスクがあります。
薬の中には薬効成分を高めるために、人工的に生成したビタミンを添加していることが多いです。そのビタミンの中にあるビタミンB1やビタミンCは、高い温度に弱いという特徴があります。ビタミンB1やビタミンCが添加されている薬を、気温が高い場所に放置してしまうと成分が変化してしまい効果が半減してしまうわけです。
もちろんビタミンだけでなく、薬の主原料の中には熱に弱い材料もあることも理由に挙げられます。そして錠剤などのカプセルの多くは、飲み込んだ時に人間の体温で溶けるように作られています。そのため温度が高いと、カプセルが溶けてしまう恐れがあります。
むき出しになった薬は空気に触れて成分が変わるリスクがあるだけでなく、そもそも飲みにくいというデメリットも発生させてしまうわけです。温度の問題は、先に言った衛生面にも大きな関係があります。湿度が高いと薬に付着した雑菌の繁殖の原因になるといいましたが、そこに温度もかかわるとより繁殖速度を上げてしまうのです。
雑菌が繁殖しやすい温度としては、平均で20度から40度の範囲といわれています。湿度が高く温度も高い状態を「高温多湿」といいますが、この状態になると薬の成分が変化するだけでなく雑菌も繁殖している可能性が高いので要注意です。
薬を保管するときの温度の内訳
薬の保管に関して、日本薬局方という専門機関が「第十六改正日本薬局方」においてルール付けをしています。この第十六改正日本薬局方の15条において、温度の内訳に規定されているのが、「標準温度」を基準に「冷温」と「室温」と「常温」とそして「微温」の5つの項目です。
薬の保管における標準温度とは、室内外の温度が19度から21度の範囲と定められています。この標準温度を基準に、「冷温」は冬の平均温度と同じ「15度以下」で、「室温」は1年の平均気温となっている「1度から30度まで」が基準です。
薬事法では標準温度と冷温そして室温まででしたが、新しく規定された薬機法に「常温」と「微温」が追加されたわけです。
常温というのは室温をさらに細かくして「15から25度」となり、「微温」は高温多湿状態でも安全に使えるように改良された薬を対象にしており「30度から40度」までの範囲となっています。
常温保存でよい場合は「直射日光の当たらない湿気の少ない涼しい所」と規定されている
薬を服用と保管をするうえで温度の重要性が分かったところで、最適な保管場所を決める必要があります。大切な薬を安全に飲みたいのであれば、やはり自宅には温度計と湿度計を用意しておくのが大事です。「微温」が30度から40度の範囲が規定されているように、現在では地球温暖化によって高温多湿状態になりやすい気候になっていることもあり薬も高温多湿に対応できるように工夫され始めています。
ただ対応できるといっても数はまだ少ないので、湿度計と温度計を見て常温の範囲で保管場所を変えるというのが先決です。基本的に薬は高温には弱いですが、15度以下から氷点下までの冷温には強いです。薬を処方するときには、必ず薬剤師から保管に関しての説明を受けることができます。
そこで常温で保管してほしいといわれた場合には、温度計で15から25度そして湿度が30パーセントから50パーセントの範囲であれば光が当たらない場所に置いておくだけでよいです。
光が当たらない場所を選んでほしい理由としては、光の中には紫外線が含まれているからです。紫外線は強い透過率があり、物体を通過する際に組織構造を壊してしまう性質があります。そのため紫外線は道具を安全に殺菌消毒をするために用いられますが、薬にとっては薬効成分を破壊するリスクがあるため避ける必要があります。
基本的に薬を入れる容器は紫外線を通さないように工夫されているので、その容器に入れたまま箱に入れて保管をするというのがベストです。
常温を超える場合は冷蔵庫へ
もし温度計と湿度計を見て、気温が30度以上そして湿度が50パーセント以上になっている場合は保管場所を変えます。その保管場所として最適なのが、食材を保存するために利用する冷蔵庫の中です。冷蔵庫の中は平均で雑菌が繁殖しにくい5度以下になっているだけでなく、湿度も空調効果によって低く抑えられています。
そのため常温を超える温度と湿度になった場合には、すぐに冷蔵庫の中に入れることで安全に服用することが可能です。
消費期限は絶対に守ろう
新しい規定で常温は15から25度とされており、この範囲を超えないようにすれば安全に薬を飲むことができます。ただし温度以外で注意しなければならないのが、安全に飲める期間の「消費期限」です。消費期限を超えた薬は、内部の原材料が劣化しており服用した場合には重大な副作用が出るリスクがあります。
これは適切に保管をしていても変わらないので、超えた場合には速やかに処分することをおすすめします。